『ざっくりわかるファイナンス』を読んで

概要

中小企業診断士ファイナンスの勉強をしているときに、- 石野雄一『ざっくりわかるファイナンス光文社新書 - を読んだ。

初学者には大変わかりやすく、とても参考になったので、試験に関連しそうな部分を自分なりにまとめてみた。

 

ざっくり分かるファイナンス?経営センスを磨くための財務? (光文社新書)

ざっくり分かるファイナンス?経営センスを磨くための財務? (光文社新書)

 

 

まとめてみた

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EVA (Economic Value Added) スプレッド

EVAスプレッド = ROIC - WACC

EVAスプレッドは、ROIC (投下資本利益率) からWACC (資本コスト) を引いた値。
つまり、EVAスプレッドがプラスであれば、企業の付加価値もプラスであるといえる。

経営者の使命は、ROICを上げWACCを下げることである!

このEVAスプレッドをプラスにする、そしてさらに拡大させることが経営者の使命といえます。

石野 雄一. ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~ (光文社新書) (Kindle の位置No.1141-1142). . Kindle 版.

ROIC (Return On Invested Capital)

ROIC = 税引後営業利益 / 投下資本

ROICは、投下した資本に対してどれだけのリターンが得られたかという利回りを示す指標。
どれだけ利益を上げていても、それ以上の資本を投下していたのでは健全な経営状況であるとは言えない。
そのため、投下した資本に対する利益を正確に表すROICが必要とされる。

WACC (Weighted Average Cost of Capital)

WACC = D / (D + E) * (1 - Tc) * 負債コスト + E / (D + E) * CAPM
D: 負債   E: 株主資本  Tc: 実効税率 

WACCは負債コストと株主資本コストを加算した、加重平均資本コスト。
企業が債権者や株主から資金調達をする場合にどれだけの資本コストがかかるのか、つまり投資家側から見た場合の期待収益率を表す。

企業はある事業に投資をするか判断する場合、このWACCを上回る収益率を上げられるかを見極めなければならない。

また、IRや適切なディスクロージャーによって、WACCを下げる努力が必要である。

実は、「WACCを下げる」ことこそが、IR(Investor Relation =「投資家を対象にした」企業の広報活動)のミッションなのです。IRの役割は、「 ウチはこんな商品を開発しました」なんていう広告宣伝では決してないの です。

石野 雄一. ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~ (光文社新書) (Kindle の位置No.1040-1043). . Kindle 版.

NPV (Net Present Value)

正味現在価値法。
事業投資にあたり、その事業が将来生み出すキャッシュインフローの現在価値と、事業に必要なキャッシュアウトフロー (投資額) の現在価値を比較し、将来生み出すキャッシュフローが上回れば投資するという判断方法。

ただし、現在価値の算出に使う割引率をどう設定するかによって、結果が大きく変わってしまう。

IRR (Internal Rate of Return)

IRRは内部収益率法。
つまり、NPVがちょうど0になる割引率を示す。
IRRがWACC以上であれば投資を実行すべしとなる。

IRRは単純に収益率の比較になるため、事業規模を考慮しないのが欠点である。

Playback Period Method

回収期間法のこと。
投下した資本がどれだけの期間で改修できるかを投資判断基準とする。
シンプルで使いやすい方法。

現在価値や事業規模を考慮しないのが欠点である。

Debt Cost

負債コスト。
つまり有利子負債の利率である。

有利子負債は以下の特徴がある

  • 株主資本コストに比べて調達コストが低い (WACCを下げられる)
  • 利子は法人税課税から控除されるため、節税効果がある
  • ただし、有利子負債が増えすぎると倒産リスクが認識され、逆にWACCが上がることになる
    => ここから企業ごとの最適資本構成を考える必要がある
  • 利益が出ても出なくても収益は契約で一定に定められているため、債権者は安定志向である。
  • 損益計算書の営業外損失に支払利息として表される
CAPM (Capital Asset Pricing Model)

CAPM = リスクフリーレート + β (リスクプレミアム - リスクフリーレート)

株主資本コスト。
つまり株主から見た期待収益率である。
株主資本コストには以下の特徴がある。

    • ハイリスク・ハイリターンの原則に則り、負債コストよりも高い値となる。
    • 有利子負債と違い、配当 (Income Gain) は繰越利益剰余金等から得られ、値上がり益 (Capital Gain) は利益によって左右される。つまり、リターンが業績に連動するため、成長志向である
    • 損益計算書に表れないためコストとしては見落とされがちである

こうして、株主の期待収益率に応えられなかったとき、コストは「 株価の下落」という形で顕在化します。 そうなってはじめて、 経営者は、 コストとして認識することになるのです。

石野 雄一. ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~ (光文社新書) (Kindle の位置No.911-912). . Kindle 版.

Rating

格付けのこと。

格付けは債権者サイドから見た企業評価である。
そのため、有利子負債が少ないほど格付け評価は上がることになる。
ただし、有利子負債が上がると言うことは株主資本の比率が高くなりWACCがあがる。また、節税効果も好くなることから、必ずしも格付けが高いことが良い経営とは結びつかないということに注意が必要である。

これからファイナンスを勉強する人には是非読んで欲しい一冊です。

ざっくり分かるファイナンス?経営センスを磨くための財務? (光文社新書)

ざっくり分かるファイナンス?経営センスを磨くための財務? (光文社新書)